ストンと軽やかにベッドに飛び乗り、すりすりとほほをすり寄せたかと思うと、私の左腕の中ですっぽりおさまってスースー寝息を立て始める、猫のみさこ。 この20年、この合図で秋の訪れを感じたものだが、彼女が天国に逝って2年半、去年も、今年も、その合図がないまま、なーんとなく秋がやって来て、なーんとなく冬が近づいてきます。すぐそばにいる気配を今でも感じるし、ステーションの目次ページの「いつもいっしょ!」に寄せられる読者投稿のペットの写真を選ぶときも、涙腺がウルウル。まるで分身が消えてしまったかのような喪失感。ペットロスと言うのでしょうが、かなり重症です。また新しい猫を飼えばいいじゃん!と慰めてくれる人も多いけれど、そんな簡単なものではありません。
そんなある日、動物写真家の岩合光昭さんお薦めの一冊として新聞記事で紹介されていたのが、内田百間の『ノラや』。なんでも、岩合さんが学生のころ、電車の中でハンカチを手にもらい泣きしながら読んだと言う随筆です。勇気を出して読んでみました。
ある日、内田先生の家に、ふらりとやって来て、居ついてしまった野良猫のノラ。気がつくと先生はいつの間にかぞっこんになってしまいます。数年後、ノラがまたふらりと姿を消してしまったから、さあ大変。先生は四六時中気になって、思わず泣き崩れるわ、取り乱すわ...。ノラの大好物だったことを思い出すのが辛くて、出前のおすしを取ることさえできない先生。ついに、迷い猫の捜索を呼びかける新聞広告を出すまでに...。
写真で拝見する文豪のお顔からは、想像もできないそのうろたえぶりに、一緒に号泣したり、くすりと笑ってしまったり。これってグリーフケアになるのかもしれません。その後、本屋さんに行くと、ついつい猫との別れを綴ったエッセイや写真集などを手に取ってしまいます。猫と人間の絆ってなんだろう。しかし、この種の本の多いこと!それにも驚きです。ほんの一部、私のお気に入りからご紹介しましょう。
『民子』(浅田次郎)、『愛しのチロ』(荒木惟経)、
愛猫に寄せる思いは、いずれも恋人へのラブレターのよう。
『養老先生、病院へ行く』(養老孟司・中川恵一)には、その訃報がニュース配信までされた猫のまるの終末医療や、お別れについても書かれていて、じーんときます。
最後に、作家50人の猫にまつわる随筆が収録されている『作家と猫』、
から、大好きな一節。
猫っていうのは本当に不思議なもんです。
猫にしかない、独特の魅力があるんですね。それは何かっていったら、自分が猫に近づいて飼っていると、猫も自分の「うつし」を返すようになってくる。
あの合わせ鏡のような同体感を一体どう言ったらいいんでしょう。
『フラシス子へ』(吉本隆明)
さて、ただ今、11月号が絶賛発売中です。
丹波特集では、山南町に取材に行ってきました。山南町といえば、2006年に発見された丹羽竜。田んぼの中に、ドーンとそびえる実物大のモニュメントは圧巻です。そして、そのすぐそばには、大型恐竜の化石が発見された地層が残る篠山川の渓流が。太古の昔、このあたりは海だったそうで、1億年前の地層があるということは以前から知られていたそうですが、この地層からニョッキリ飛び出していた化石を発見したのは、なんと、散歩をしていた二人の地元の男性。まさか...と調べてみたら、1億1000年前の恐竜の●●の部分だったというかのですから、研究者たちもびっくり! タンバティタニス・アミキティエ。"丹波の巨人"という名前に、お二人の友情を意味するアミキティエという言葉を繋げての命名されたそう。また、その一人、村上茂さんは、4年後に世界最小の恐竜の卵の化石も続けて発見。ヒメウーリサス・ムラカミイという名前は、ムラカミさんの名前に、発見者を表す「イ」という文字がつけられたもの。古代生物史に名前が残るなんて、スゴイですよね。もしかしたら、あなたの足元にも、こんなロマンが埋まっているかも⁈
そして、「小さな庭仕事」では、宝塚市の西谷地区にあるダリア園に行ってきました。日本有数のダリア園だったなんて、知りませんでした! ダリアって、どんどん品種が増やせるそうで、ここには300種類も! 10月16日(土)と17日(日)には、「ダリア花まつり」も開催されます。お花の摘み取りもできますよ!
気持ちのいい季節、ぜひお出かけを!
(M・O)
★12月号のブログの更新日11月10日です。
★編集室スタッフ5人が交替で登場します。お楽しみに!
2021年11月号